出口さんの論文が PCCP誌に掲載決定

出口由菜さん(2025年3月, 博士前期課程修了)が進めた高分子イオンゲル電解質に関する研究成果が “Physical Chemistry Chemical Physics (PCCP)” に受理されました。
本論文では、4分岐型ポリエチレングリコール(TetraPEG)と高濃度のLi塩を溶解したアセトニトリル電解液を組み合わせた「高濃度有機ゲル電解質」を構築し、そのゲル化挙動・溶媒和構造・Liイオン輸送特性について実験と分子動力学(MD)シミュレーションの両面から包括的に解析しました。特に、Li塩濃度の変化に応じてTetraPEGが一旦不溶化した後に再可溶化するという特異な挙動を示すこと、再可溶化した系ではゲル化と同時に優れた力学特性とイオン輸送特性が両立することを明らかにしました。さらに、電極界面でのMD解析により、中性化学種(PEGおよび溶媒分子)がLiイオンの局所拡散場を形成し、電極界面におけるLiイオンの移動度が向上する様子を可視化し、実験で得られたLiイオン輸率の増加傾向を分子レベルで裏付けることに成功しました。

“Ion transport and structural properties of highly concentrated organogel electrolytes based on Tetra-arm PEG networks”
Y. Deguchi, Y. Yasui, T. Tashiro, M. Matsugami, S. Sawayama, and K. Fujii*
Phys. Chem. Chem. Phys. (2025). online-published
DOI: 10.1039/D5CP03562G